Q.娘(高校生)の生理痛についてです。小学5年生で初潮を迎え、年々生理痛がひどくなってきました。最近では生理2日前位から頭痛、微熱、だるさと学校を休む時もでてきました。専門医を受診したところピルを飲むように勧められましたが、副作用についても気になりますし、また飲んだことで体調を崩すこともあるよう。それとは別に太ったり肌荒れなどもあると聞いて、現在はピルではなく、痛み止めと漢方を飲み、ピルに踏み切れません。今のところ痛み止めがよく効いているのですが、周りにもピルを飲んでいるという話をよく聞きます。現状どうなのか知りたいです。(相談者・49歳)
この質問に回答してくれたメディカルパートナーは…
貞森理子(さだもりレディースクリニック/広島市中区)
【経歴】
大崎上島町出身。1994年福岡大学医学部卒業。医学博士。2012年、広島市中区大手町で産婦人科クリニックを開業。
日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医であり、幅広い世代の女性特有疾患の診療に尽力している。産婦人科医のいない地域での診療にも携わっている。
専門分野:産婦人科、女性ヘルスケア
お嬢様が学校を休むほどの症状があり、とても心配ですね。なによりご本人もつらかったと思います。治療について不安があることもお察しいたします。ご質問ありがとうございます。
ピルを内服することで太るのではないかと質問されることが多いのですが、決して太るわけではありません。ピルと体重変化に対する影響を評価した試験がありますが、ピル内服群と対照群において体重変化に差を認めなかったと報告されています。規則正しい食生活をされていれば心配ないでしょう。
ピル服用率については、先進国の中でも日本は低いのが現状です。2019年の報告では、フランス33.1%・アメリカ13.7%に対して日本は2.9%です。
当院では、月経困難症と診断された患者様のピル服用率は約40%です。
治療については、一人ひとりに合った方法を選択していくことが大切であり、かかりつけ医とよく相談して決めていただき、より良く快適に過ごしていただくことを願っています。
月経困難症(生理痛)とは
月経期間中に起こる病的症状のことです。
下腹痛、腰痛だけではなく、お腹の張る感じ、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢および憂うつなども月経困難症の症状です。
大きく分けて機能性月経困難症と器質性月経困難症があります。
機能性月経困難症は、初経後2~3年より始まり思春期に多くみられます。痛みは痙攣性、周期性で、原因は子宮口が狭いことやプロスタグランジンという物質の過剰分泌による子宮の過収縮と言われています。
※プロスタグランジンとは、子宮の血管を収縮させて月経血の排出や止血する働きがあります。出産時の陣痛をおこす作用もあります。
器質性月経困難症は、月経前4~5日から月経後まで続く持続性の鈍痛のことです。子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの器質的疾患に伴うものをいいます。機能性と比較すると年齢が高くなるにつれて増えていきます。
月経困難症の薬物治療について
対症療法:鎮痛剤、漢方薬など
ホルモン療法:低用量エストロゲンプロゲスチン配合薬=ピル
黄体ホルモン製剤
子宮内黄体ホルモン放出システム
ピルは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが配合された薬です。排卵を抑制することで子宮内膜が厚くならないため、月経量を減少させます。
排卵を抑制することで子宮内膜が厚くならないため、月経量を減少させます。また子宮内膜から作られるプロスタグランジンの産生も抑えられるため子宮の過収縮を減少させ月経痛が緩和します。
ピルは避妊のイメージがあるかもしれませんが、月経困難症の保険適応薬剤です。月経痛のみならず、月経量を減少させ、排卵痛、PMS、月経不順やニキビなどにも効用があることが知られています。また月経回数を3~4ヶ月毎に減らすことができるピルもあります。
副作用にはマイナートラブルと呼ばれている嘔気、悪心、不正出血、乳房の張り、むくみ、頭痛などがあります。服用開始3ヶ月以内に消失することが多いです。注意が必要な重篤な副作用としては、静脈血栓塞栓症があります。妊娠期や授乳期と比較すると決して高い確率で起こる副作用ではありません。服用方法や注意点を守り、定期的に通院していれば、過剰な心配をする必要はないと思われます。
※症状には個人差がありますので必ず医師にご相談ください。
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