Q.子宮筋腫はがんになることがありますか?(相談者・46歳女性)

私は20代のときに初めて子宮頸がんの検診を受け、そこで子宮筋腫がある事を知りました。特に問題なく毎年のがん検診のついでに子宮筋腫も診てもらってました。その後30代で結婚。ブライダルチェックでも子宮筋腫は問題なし。30代後半で不妊治療開始。何回目かの体外受精でやっと妊娠できて喜んだのもつかの間。それまで全然問題なかった子宮筋腫が変性をおこし、妊娠中にいびつな形の子宮筋腫になり、流産してしまい頭の中が真っ白に。ずっと子宮筋腫があっても妊娠出来ると言われてきたのにショックでした。子宮筋腫が妊娠により悪さをするなんて思ってもみなかった。流産後は、子宮筋腫の手術をしました。閉経すれば子宮筋腫も小さくなると聞きますが、がん化することはあるのでしょうか?
この質問に回答してくれたメディカルパートナーは…

羽間 夕紀子
(ゆきレディースクリニック段原/広島市南区段原南)
経歴:
広島県広島市出身。平成23年川崎医科大学医学部卒業。専門は婦人科で、医学博士を取得。産婦人科専門医、女性医学専門医、細胞診専門医、抗加齢学会専門医を取得。2024年7月に段原にクリニックを開業。
専門分野:
婦人科、女性医学(ヘルスケア)、がん検診、抗加齢
ご質問ありがとうございます。不妊治療までしてやっと妊娠できたにもかかわらず、流産という結果になり心を痛めたことがわかりました。これからの経過についても心配になると思います。私のアドバイスが役に立つことを願って回答させていただきます。
子宮筋腫とは
まずは、子宮筋腫という病気について説明させていただきます。
子宮筋腫とは、子宮の筋層(筋肉)にできる良性の腫瘍(こぶ)で、主に30〜50代の女性に多くみられる一般的な婦人科疾患です。小さいものも含めると女性の約3〜4人に1人は、生涯のどこかで子宮筋腫を持つといわれています。はっきりした原因はまだ完全には解明されていませんが、女性ホルモン(エストロゲン)の影響や、遺伝的な素因、生活習慣・環境要因(肥満・ストレス・睡眠不足・初経年齢・出産経験)が関係していると考えられています。女性ホルモンが影響している場合が多く、卵巣から女性ホルモンの分泌がある期間…つまり月経がある期間は、子宮筋腫は徐々に増大するリスクがあり、逆に閉経後は女性ホルモンの影響を受けないため徐々に縮小していくことが知られています。
子宮筋腫の自覚的な症状は、月経過多・月経痛・下腹部の圧迫感や痛み・それによる貧血・頻尿・便秘がありますが、筋腫が小さい場合はたいてい無症状のため、検診の内診や超音波検査で偶発的に指摘される方も多いのではないでしょうか。自覚症状や筋腫の位置や大きさ等必要に応じて、骨盤部MRI検査や子宮鏡検査をする場合もあります。急激に大きくなったり、症状が出現したりするため、筋腫を指摘された方は症状がなくても定期的な経過観察をお勧めいたします。
子宮筋腫の治療法
筋腫の治療法は主に以下の3つです。
1つ目は経過観察です。症状がない方、筋腫が小さい方、閉経後の方は経過観察を選択する場合が多いです。
2つ目は薬物療法になります。これは手術を避けたい場合や手術前に施行することが多い治療法になります。もちろん有害事象も伴ってきますので、主治医の先生と相談したうえで行っていきます。
3つ目は手術療法です。子宮ごと摘出する方法や、筋腫のみを核出する方法、子宮動脈塞栓術と言って筋腫を栄養する血管を塞ぎ縮小させる治療法もあり、どの治療法も年齢や挙児希望の有無、筋腫の大きさや場所、症状の程度で違ってきます。
もし筋腫を指摘された方で不安になられる方がいましたら、是非婦人科受診をされるか主治医に聞いてみてください。自分のライフワークに合わせて適切な治療法を医師と相談してみるのがいいと思います。
子宮筋腫はがんになる?
子宮筋腫は基本的には良性腫瘍ですが、“子宮肉腫”という悪性腫瘍に変わることがあるといわれていますが、その頻度は0.1~0.3%以下(1000人に1-3人程度)と非常に稀です。多くのケースでは、最初から子宮肉腫であるにもかかわらず、見た目が筋腫に似ているため鑑別が困難で術後の病理検査で発覚することもあるといわれています。急激な増大・急な腹痛や発熱・不正出血・MRI画像の異常所見・腫瘍マーカーの上昇等あれば癌化を疑う兆候にはなりますが、前述したように術前に完全に区別するのは困難と言われています。診断が非常に難しいので、我々産婦人科医は常に頭に入れながら筋腫を観察していますが、肉腫の頻度としては非常に低いため、みなさんはきちんと経過観察していれば必要以上に怖がる必要性はないのではないかと思います。
妊娠への影響は?
では、若年女性が気にされている、“子宮筋腫は妊娠に影響するのかどうか”についてです。子宮筋腫は妊娠に影響を及ぼすことがあります。しかしその影響の程度は、筋腫の大きさ・場所・数によって異なります。筋腫の中でも特に粘膜下筋腫は、受精卵の着床を妨げる可能性が高く、不妊症の原因になります。
また、子宮筋腫は妊娠中に、流産・早産・胎位異常・胎児発育不全・胎盤異常・赤色変性を起こすリスクがあります。さらに、子宮筋腫の位置や大きさによっては、自然分娩が難しく帝王切開にならざるをえなかったり、微弱陣痛や産後の出血のリスクが増加します。
また相談者様のように、赤色変性という変性を妊娠中に起こしてしまうことも稀にあります。赤色変性は特に妊娠中期に起こりやすく、子宮筋腫への血流が一時的に遮断されて壊死や出血が起こる状態です。妊娠によって子宮が大きくなり筋腫への血流が不足したり、妊娠の影響で筋腫自体が大きくなり、結果的に筋腫への栄養供給が追いつかなくなることで発症すると考えられています。ほとんどの場合、胎児に影響を与えないとされていますが、強い痛みや子宮収縮が持続すると早産のリスクが上がる可能性があるため慎重な経過観察が必要です。
筋腫のトラブルは上記に挙げただけでも多種多様で、そのほかにも症例報告になっているような稀なトラブルもあります。そのためそれぞれの患者さんのライフスタイルに合わせて治療方針を決定していく必要があります。知り合いがこういう治療をしたからとか、知り合いがほっておいても大丈夫だったから私も、という安易な考えで大丈夫なこともありますが、是非産婦人科医に相談をしながら自分に合った方法をみつけて筋腫とうまく付き合っていきましょう。
※症状には個人差がありますので必ず医師にご相談ください
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